本物か偽物か見分けるコツはたった一つです。普段から本物をたくさん見ておくことです。そうすると、偽物を見た時にすぐに気付けます。違和感を感じたり、おかしいなと思うので「やめておこう」となるのです。
高いお金を払って、偽物を掴まされる人がいます。こういう人は、本物を見る機会が極端に少ないのです。本物なら有り得ない価格設定や、本物を売る人なら絶対に言わない台詞に気付くことが出来ません。偽物を売る人の「良いカモ」になっているのです。
日本橋の丸善書店のギャラリーで版画展をやっていました。私の大好きな横山大観の「蓬莱」という名画の版画が置いてありました。版画とは言え、全体的にぼんやりとしたタッチで、全体的に粗い印象を受けました。それでも値段は33万円もします。
この一ヶ月前に、島根県の足立美術館で開催されている、横山大観展に行きました。そこには「本物」の蓬莱が置いてあり、私はそれを生で見ています。だからすぐに、その版画が粗いなと判断できました。33万円もあれば、東京からその展覧会を10回見に行けます。そういうお金の使い方をした方が、目利き力は磨かれます。
こういう体験をたくさんしておくと、偽物を掴まされることも、無駄使いすることもなくなります。本物を体験するお金をケチる人ほど、偽物に大金を払います。これはいつの世も同じです。詐欺師は、そのことをよく分かっているのです。