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虎ノ門で焼き鳥丼10分一本勝負【エッセイ】

年に一度くらい、焼き鳥丼が無性に食べたくなる。そのタイミングが急に来てしまったので、雑誌でたまたま見つけた虎ノ門の名店に行ってきた。

tabelog.com

 

場所は虎ノ門駅9番出口からすぐ。階段を上り、まっすぐ進んで、大きな道を左に曲がり、一つ目の道をまた左へ。そうすると左手に「いかにも」という店構えが見つかる。

 

スライド式の和風ドアを滑らせると、中はモワッとしている。店内に焼き鳥の煙が立ち込めている。この時点で「勝ったな」と思った。愛想の良い女将さんがテキパキと席に案内してくれる。運良くカウンターの左端が空いていた。この位置からは、炭火で焼いている様子が丸見え。これぞ特等席。

 

注文はもちろん焼き鳥丼。他にはそぼろ丼、とりかつ、稲庭うどん(焼き鳥丼小付き)もあるが、ここは素直に看板メニューで攻めるべし。

 

串に刺さったレバーを焼く姿が見える。あれ、俺のレバー。そんなことを思いながら、我が子のようにじっと見つめる。じわじわと色が変わってくる。

 

13時を過ぎているが、次から次へと客が押し寄せる。女性の姿も多い。しかも一人客。注文は焼き鳥丼が圧倒的多数。きっと常連なのだろう。

 

来た来た。焼き鳥丼到着。良い。見た目、完璧。先ほど、目の前で焼いていたレバー、つくね、もも肉、手羽先に、彩りを考えたししとう、下にはそぼろが鎮座。これにお漬物と味噌汁がついて1,000円。どうだ、虎ノ門。そう言われている気がした。

 

まずはモモ肉から。うん、良い。好きな感じ。肉も柔らかい。そぼろも行ってみる。思い出した。そぼろってこういう食べ物だったということを。前に食べたのはいつだろう?もしかすると、高校生の時の弁当以来かも。ということは約20年前か。おいおい、それまでどこで何をしてたんだ、そぼろよ。寂しかったろうに、寂しかったろうに。ごめんよ、放っておいて。甘みを抑えた素朴なお味。上品なそぼろとは、こういうことを言うのだろう。

 

味噌汁も良い。そぼろの素朴さとは異なり、味はしっかりめ。全体でバランスを取る作戦か。相手の戦略が色々と分かってきて楽しい。

 

あっという間に平らげた。時計を見るとたった10分。丼ものは、やはりこうでなくっちゃいけない。ちんたら食べるより、ワシワシと勢いよく掻っ込むくらいがちょうどいい。それでこそ江戸っ子。と、三重県津市生まれの男がつぶやく。

 

虎ノ門の名店レベルになると、精算時にレジを使うような野暮なことはしない。手渡し。現金手渡し。女将さんに直接1,000円を払い店外へ。あぁ、良い昼メシだった。天気も良い。愛宕神社の「出世の階段」でも登るか。そんな思いを胸に、虎ノ門ヒルズの方へ歩を進める平日の午後だった。

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