「絶対に失敗したくないんです」とか「失敗するのが怖いです」という人がよく相談に来ますが、そういう人によく聞かせる私自身の失敗談があります。
「就職率99%」を誇る大学に通っていたのですが、新卒での採用に全て落ちました。最終面接までは4社残ったのですが、本命の企業も含め「全敗」です。どうしようもなくなったので、会社を立ち上げたばかりだという姉の同級生に電話しました。
「仕事はあるけど人手が足りない」ということで、その場で「即、採用」です。あれだけ何ヶ月も頑張っても結果が出なかったのに、電話一本で仕事が決まるという、まさかの展開でした。
職種はイベント運営会社だったのですが、屋外での現場があまりにも過酷すぎて、心身共に疲れてしまい、一年弱で辞めることになりました。
ニートになったので、ひたすら遊ぶことにしました。区民プールの「一ヶ月フリーパス」を買い、老人に混じって、毎日のように泳いでいました。おかげで平泳ぎが上手くなりました。本を読んだり映画を観たり、居酒屋に足繁く通ったりと「ニートって忙しいな」と思いました。
そんな生活が半年ほど経った頃、ふと転職サイトを見ると「第二新卒」というキーワードを見つけました。私はこれに該当していたので、仕事を探すことにしました。2,000件中1,950件目くらいで、ようやく希望する職場を見つけ、面接を受けに行きました。落ちました。
が、一週間後、メールが届きました。「もし、まだどこにも決まっていないなら、再度、面接を受けませんか?」と書かれてありました。後日、受けに行き、社長の話にひたすら相槌を打っていたら、今度は採用になりました。
後から聞いたところ、私は最終選考の二人まで残ったそうです。受かった人が3日でクビになり、私が再浮上したとのこと。それで運良く雇ってもらえることになりました。
仕事は楽だったのですが、社長がかなりワンマンなのと、その嫁が意味の分からないことでしゃしゃり出てきて、社内のムードが悪くなり、売上も下がってきて、3年ほどで辞めることになりました。26歳で「人生二度目のニート」です。
そこから色々と準備して、27歳になった直後に起業しました。現在42歳ですが、それからずっと今の仕事をしています。起業してからも失敗談なんて「山のように」あります。
考えに考えて企画したセミナーに全く人が集まらなかったり、事務所の家賃が払えなくなったり、気の合わない人と仕事をして揉めたり、私のわがままのせいで大勢に迷惑をかけてしまったり、何ヶ月も仕事の依頼が来ない時期があったりと、挙げていけば「キリ」がありません。
今となっては笑い話で済みますが、その時は「この世の終わり」みたいに思っていました。失敗をしないに越したことはありませんが、別にどうってこともないなと思えるようにもなりました。プライドなんてとっくの昔に捨てました。命まで取られることもありません。失敗を色々と経験して、人間的にかなり「タフ」になれました。
という話を目の前の相手にすると、かなり驚かれます。「笹野さんはエリート街道まっしぐらだと思ってました」とか「失敗なんてしたことのないタイプに見えました」という人が多いので、ギャップを感じるそうです。
生きている限り、失敗はします。失敗が多いということは、それだけチャレンジしたということであり、経験値が増えたということです。そう思えるようになるまでには時間がかかりますが、乗り越えることによって「新たな景色」が見えるのも事実です。
と、頭では理解できても、自身の経験が無いと、いまいちピンと来ないのもまた事実です。どんどん挑戦してどんどん失敗しろとは言いませんが、失敗すること自体はそんなに怖いことでもないし、悪くはないよ、とは言います。後は、本人がやるか、やらないかだけの話です。