人が人生で最も耳にする回数が多いのが「自分の名前」です。それだけ聞き慣れている単語であり、耳に「心地良い」ことばです。また、自分の名前を読んでもらうことにより、相手に親近感を抱くという効果もあります。これを心理学では「ネームコーリング」と呼びます。
クリエイティブディレクターの箭内道彦さんが、矢沢永吉さんと仕事をした時に「それでね、箭内さん」と言われた瞬間、とても嬉しかったというエピソードを読んだことがあります。「名前は最強のキャッチコピーだ」と思ったとのこと。その気持ち、よく分かります。
私は人の名前を覚えるのがとても苦手なので、お客様と対面する5分前くらいから、その人の名前を小声で「連呼」しています。「鈴木さん、鈴木さん、鈴木さん・・・」というように、何度も声に出し、間違えないようにしているのです。
レンタル会議室に入り、A4のコピー用紙を取り出し、左上に「鈴木さん」と名前を書くのが、一番最初にすることです。それをチラチラ見ながら、二時間の間に何度も名前を呼ぶようにしています。
「鈴木さんはどう思いますか?」とか「鈴木さんの場合はですね」というように、会話の中に相手の名前を入れるようにしています。そうすると、相手の満足度が上がるということが、経験として分かっているからです。
たまに私のことを「先生」と呼ぶ人がいますが、これは良くないなと思います。というのも、先生というのは固有名詞ではなく、普通名詞だからです。普通名詞ということは誰にでも当てはまるということであり、個人を指している訳ではありません。だから「心の距離」が遠く感じるのです。
個別コンサルは「一対一」です。目の前にいる人に対し、心の距離を感じさせると、それだけでもう直接会っている意味が「半減」してしまいます。そこまで考えて、目の前の相手とは接しないといけません。